雀のしっぽ

記憶と想いの覚書き

マンション、猫 Part1

前の晩、マンションの入口で猫を見た。

痩せた肢体に周囲に敏感な反応から野良猫だとすぐに分かったので、こちらも距離を置いた。猫はそこに留まりたいけど人が来たので迷いながらも身を隠した。

子猫がいるな。そんなに緊張したら分かってしまうよ。

去り際の母猫の心配そうな様子が気に掛かる。

子猫はどこだろう。

人が来たので子猫も身を潜めたのかもしれない。それならそのままで、すぐに通り過ぎるから。歩き始めた冒険好きの子猫を監視しながら、きっと危険に付いても教えているはずだから。調度良かったよね、人との遭遇もね。

そのまま気が付かないふりをして階段を上った。部屋の鍵を開けながら階下の草むらの辺りから子猫らしき鳴き声が聞こえて来た。

呼んでいる、母猫を。